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シンプルでスタイリッシュな造形には、観る者をわくわくさせる魅力があります。円、三角形、四角形、またその組み合わせによる幾何学的(ジオメトリック)なスタイルは、アート・デザイン・建築など様々な分野で、現代的なイメージと共に盛んに取り入れられています。
幾何学というと、抽象的で取っ付きにくいと思われるかもしれません。しかし、装飾的な要素が削ぎ落とされているからこそ、アーティストのセンスや工夫、かっこよさが明快に伝わるのではないでしょうか。
『Geometoric Lab』(幾何学研究室)と題する今回の特集では、幾何学的スタイルをめぐる6つのキーワードをもとに様々なエポックをご紹介します。幾何学的造形の魅力だけでなく、それらを操るクリエイティブなアイデアや技術をアーティスト達と一緒に探りましょう!

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20世紀と共に始まる幾何学的情熱

「自然を円筒、球、円錐によって扱う」と語ったポール・セザンヌ。1906年、セザンヌの回顧展がパリで行われました。長年の探求の末に生み出された独特の構成を持つセザンヌの作品は、アーティストたちにあらたなビジョンを与えます。その直後には、若きパブロ・ピカソとジョルジュ・ブラックが対象を幾何学的な図式や立方体の集積として描く実験(キュビスム)を開始するなど、それまで作品を構成する隠された枠組みだった幾何学や黄金比などによる構成が、造形要素として画面上に姿を現し始めます。『キュビスム』の他にも『オルフィスム』『ドイツ表現主義』『バウハウス(Case-2で紹介)』『ロシア構成主義』など、その傾向は様々な活動を通して実を結んでいきます。

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マレーヴィッチ
『シュプレマティスム(絶対主義)』を唱えたロシアの画家カジミール・マレーヴィチ。彼は1915年、画面に大きく正方形だけを描いた作品を発表。その革新性は当時の美術に大きな衝撃をもたらし、ロシア構成主義やバウハウスなどの造形理念に大きな影響を与えた。
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モンドリアン1

モンドリアン2
風景や静物をモチーフに抽象形態への移行を試みていたオランダの画家ピエト・モンドリアンは、1920年代の始め造形の要素を「水平・垂直の直線」と、「赤・青・黄」の三原色に還元した作品へ到達。モンドリアンの目指した作品はとても厳格なもので、画面の分割は黄金比によって決定された。
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ドースブルフ
モンドリアンも参加していた、オランダの芸術家グループ『デ・ステイル』の創始者テオ・ファン・ドゥースブルフ。後にバウハウスとも関係を持ち、生徒や教授陣にデ・ステイルの造形原理を伝えた。
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新しいもの作りを目指した伝説の学校

バウハウスは、1919年ドイツのワイマールにて、アート・デザイン・クラフトを総合的に学ぶ場所として作られた国立の美術工芸学校です。第一次世界大戦敗戦からの再出発を目指し、前衛的な芸術家が教師として加わりました。1933年ナチスにより14年間という短い期間で閉校となりますが、現代の教育、造形表現のあり方に大きな影響を残しました。

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カリキュラム
画家であるとともに、教育者であったヨハネス・イッテンによって作成された、バウハウスの教育理念を表した図。基礎の学習から、素材の扱い、自然や科学の知識に至るまで、総合的に芸術を学ぶカリキュラムが用意された。
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イッテン
バウハウスでは予備過程(基礎過程)を担当したイッテンは、授業において総合的な造形力を養うために、多種多様なトレーニングを用意した。構成主義的な造形と結びつけた、色環やグラデーションによる色彩理論は、現在も色彩学の基礎として学ばれている。



クレー
カンディンスキーらと共に『青騎士』のグループに参加していたパウル・クレー。バウハウスでは形態と色彩の理論、テキスタイルを担当した。講義と共に絵画理論の研究に取り組み、著作も残している。バウハウスでの経験は後にクレー自身の表現にも影響をあたえた。
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カンディンスキー
抽象絵画の先駆者として知られる、ロシア出身の画家ワシリー・カンディンスキー。美術理論家でもあった彼は、自らの作品制作を通して学んだ色彩の心理的効果等の研究を生かし、バウハウスでは形態と色彩の理論を担当していた。
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アルバース
バウハウスで学び、卒業後はバウハウスで教鞭を執ったヨゼフ・アルバース。バウハウス閉鎖後には渡米し、ブラックマウンテンカレッジ、エール大学等で色彩の研究を続けた。アルバースの色彩は人間の視覚機能と切り離せず、色面の関係には様々な創造の可能性があるという新しい色彩理論は、美術だけでなく、デザインの分野でも大きな影響を与えている。
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1960年代、ポップアートと並んで生まれたミニマリズム

ミニマルと言う言葉はデザイン、インテリア、ファッションなど、今日様々な分野で使われ、身近なスタイルとなっています。その始まりは、1960年代のニューヨーク。ミニマル・アートは、権威によって硬直化した従来のアートに対抗すべく、「作品」「展示場所」「鑑賞者」を新しく結びつけようとする若いアーティストの情熱によって生まれました。最小限の要素で表現を追求するミニマリズムは、同時期に姿を現していたポップアートとは正反対に、説明的・装飾的な要素を排除した作風が特徴ですが、アーティストによってその捉え方は異なり、様々な作品が存在します。

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カールアンドレ
コンスタンティン・ブランクーシの抽象彫刻に影響を受け、ミニマルな作風をいち早く作品に取り入れたカール・アンドレ。木、金属の板、レンガ、離石などを組み合わせた作品を制作。繰り返しという手法を特徴とし、アンドレ独自の美意識に則った、素材それ自体の提示を目指した。
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ジャッド
1960年代の半ば、金属製の立体を縦や横に並べた作品によって、ミニマル・アートを代表する作家となったドナルド・ジャッド。調和のとれたプロポーション、ボリューム等によって、知的で特殊(スペシフィック)な空間の具現化を目指し、自らの作品を従来の絵画・彫刻とは異なる『スペシフィック・オブジェクト』と定義。その作品は、アーティストだけでなく、建築家やデザイナーにも大きな影響をあたえている。
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ルウィット
実際の制作過程よりも、作品の概念(コンセプト)を重視する『コンセプチュアル・アート』。その中心的なアーティストであったソル・ルウィットは、単純な形とプランとの組み合わせに重点を置いた平面、立体作品を制作。プランを実現する為に、機械的とも言える作業を繰り返して生み出される作品は、人間的尺度を超えた神秘性を感じさせる。
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ケリー
1960年頃に現れた、単純な形態が明確な輪郭を持って描かれ、ミニマルアートと共通性をもつ『ハード・エッジ・ペインティング』。その代表的な作家であるエルズワース・ケリーの作品は、大胆に描かれたシンプルな形態が、大きな存在感を持って見るものに訴えかける。
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マーティン
ニューヨークでエルズワース・ケリーらとの交流から、構成的な絵画の実験を始めた女性画家アグネス・マーティン。手描きによって緻密に描かれた直線やストライプなど、幾何学的な形態を使用しながらも、やわらかい光や透明感など自然現象の美しさを感じさせる、独自の世界観を生み出した。
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ミニマリズムの影響力

ミニマルアートはその極端なまでのシンプルさゆえ、その運動の当事者も含めてコンセプチュルアート、ランドアートといった新たな動向に対応してその作品を変容させていく事になります。しかし、ミニマリズムは後のアーティスト達にも様々な影響を与え続けながら、新しい可能性を開いていくことになります。

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スミッソン
ミニマルアートから出発したロバート・スミッソンは、地球環境にまで意識を広げて展開される『ランドアート』と呼ばれる新しいアートのあり方に辿り着く。スミッソンの代表作である、ユタ州のグレートソルトレイクに制作された螺旋型の突堤『スパイラル・ジェティ』。湖の水位の変化によって水没を繰り返すスパイラル・ジェティは、作品とその場所が相互に激しく関係し合いながら、「作品=人間の作り出した活動の一時的な痕跡」という事実を意識させる。
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タレル
60年代、ロサンゼルスの美術運動『ライト&スペース』を代表する作家であるジェームズ・タレル。天井に設けられた円形や方形の開口部から空を眺める作品など、シンプルな形を用いながら知覚心理的に特殊な状況を作り出し、鑑賞者の知覚を日常とは異なる状態へ導く。
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ゴンザレス=トレス

ロニホン
90年代以降、ミニマリズムの幾何学的形態および、繰り返しによる表現方法を新しい形で使用するようになっていく。フェリックス・ゴンザレス=トレス、ロニ・ホーンを初めとするアーティストによる、ミニマルな作風ながらも物語性やメタファーなどを取り込んだ作品は、従来のミニマルアートとは異なる新しい可能性を開いていくことに。
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ライプ
ミルク、大理石、蜜蝋、米、花粉などを用いて、彫刻・インスタレーション作品を制作するドイツのアーティスト、ウォルフガング・ライプ。ミニマルなスタイルを取りながらも、それぞれの素材がもたらす象徴的な意味を感じさせる。
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ケンピナス
リトアニア出身のアーティスト、ジルヴィナス・ケンピナスは、磁気テープを天井一面やトンネル状に、繰り返して張り巡らせた大規模なインスタレーションを制作。限られた素材をシンプルな形で用いながらも、複雑な変化が生み出されていく。
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シンプルなパターンの背後には何が?

抽象形態の繰り返しによって生み出されるパターン。古来よりファッション、インテリアなど、文化と密接に関係した様々なパターンが生み出されてきました。それぞれのパターンは、その組み合わせにおいて隠された意味を持っています。一見ただのパターンでも、その背後にあるアルゴリズム(制作方法)にまで意識を広げれば、別の世界が現れてきます。(アルゴリズムとは、計算方法を意味するコンピュータ・プログラミングの用語。)

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ライリー
ヨセフ・アルバースやハンガリー系フランス人の画家ヴィクトル・ヴァザルリによって50年代に展開されていた、色彩と形態の視覚的効果を発展させ、1960年代中頃に注目を集めた『オプアート』。オプアートを代表するアーティストのひとりであるブリジット・ライリーは、単純な要素の繰り返しによって、人間の視覚のゆらぎ(錯視)を伴う独自の作品体験をもたらす。
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リヒター
現代ドイツを代表する画家ゲルハルト・リヒターは、2010年自らの抽象画の一部分を切り出し、コンピュータを用いて横方向に反復させることで様々なパターンを作り出したシリーズを発表。まるで万華鏡のようなパターンの生み出す偶然の造形は、その膨大な作品数と共に見るものを圧倒する作品。
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イルマ
オランダのエディトリアルデザイナーとして、独創的な書籍を数多く生み出しているイルマ・ブーム。ユネスコ文化世界遺産に登録された世界各国の場所を元に、ストライプの壁紙を制作した。その土地に固有の色彩をデザインに取り入れるユニークな試み。
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池田亮司&ニコライ
ミュージシャンであると同時に、アーティストとして音の視覚化をテーマとしたインスタレーションを制作しているカールステン・ニコライと池田亮司。音の波形をモニター装置を使って図形化し、周波数の違いによってカテゴリー化するなど様々な興味深い研究を行い、実験的な作品制作をおこなっている。
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オロスコ
メキシコ出身の現代アーティストであるガブリエル・オロスコ。円形と4つの色のみを使用し、チェスの『ナイトの動き』に基づいて定義されたルールによって、単純な形とルールから複雑な変化が生み出していく。
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ビュロック
ロンドンでアートを学んだアーティスト、アンジェラ・ビュロックは、コンピュータで制御されたドローイングマシンがプログラムを遂行する過程を作品化している。
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20世紀と共に始まる幾何学的情熱

デ・ステイル、バウハウスに代表される新しい造形運動は、デザインの分野での大きな変化を生みだします。「シンプルなタイポグラフィ」「構成的で合理的なデザイン」「洗練された明快な視覚伝達」などを特徴とし、ミニマリズムなど様々な分野と影響し合いながら、消費社会における現代的なデザインを発展させていきます。

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ニュータイポグラフィ
1920年代、バウハウスとロシア構成主義の新しいデザイン概念を取り込んだ、『サンセリフ体』と呼ばれる新しいタイポグラフィが誕生。



マックス・ビル
1950年代、バウハウスで学んだスイス出身のマックス・ビル、テオ・パルマーらによって、「数学的に構築されたグリッドによるデザイン」「目的にかなった明快な視覚情報の伝達」「サンセリフ体の使用」を特徴とするデザイン様式『国際タイポグラフィック様式(スイス・デザイン)』が生み出されていく。
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ブロックマン
1960年頃、雑誌「ノイエ・グラフィーク」の中心人物であったグラフィック・デザイナー、ヨゼフ・ミューラー=ブロックマン。彼の秩序と洗練を重視し、普遍性を目指した現代的なグラフィック表現は、国際タイポグラフィック様式の到達点とされる。
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ウェイナー

ルシェ
ヨーロッパの新しいデザインの動きは、高度な消費社会を形成しつつあった戦後アメリカのデザインにも多大な影響を与えた。広告などから人々の生活に密接な関わりを持つようになったタイポグラフィーは、ローレンス・ウェイナー、エド・ルシェなど現代アーティストの作品にも取り入れられていく。
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クロウェル
デ・ステイル発祥の地オランダのグラフィック・デザイナー、ウィム・クロウェルは、1960年頃より幾何学的なデザインの魅力を追求し、スキポール空港のサインや、アムステルダム美術館のポスターのデザインを手掛けている。また、コンピュータの時代を予見し、コンピュータの為の革新的なアルファベットもデザインしている。
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ラムズ
ドイツ生まれのインダストリアルデザイナーで、電機機器メーカーの「ブラウン」にて30年近くヘッドデザイナーを勤めたディーター・ラムズは、ミニマリストデザインを追い求め、シンプルで美しい工業製品を数多く生み出した。彼のデザインした製品は、ニューヨーク近代美術館に永久展示されている他、デジタル製品メーカーのアップルのデザインにも大きな影響を与えたとされる。
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